信用取引や先物取引を行っている時に相続が起こったらどうなるか。
あなたはご存知ですか?
レバレッジがかかる取引の場合、なんとなく普通の相続とは違う気がしますよね。
状況によっては大きく損してしまうので、もしかしたら残された家族に迷惑をかけてしまうかもしれない・・・
そんな不安を感じるのも当然だと思います。
そこで、このページでは信用取引や先物取引を行っている人が亡くなった場合、何が起こるのか?
そして、どんな対策をすべきなのかをお伝えしていきたいと思います。
1.相続が起こったらどうなるの?
信用取引や先物取引の建玉は、相続することはできません。
証券会社は、取引を行っている人が亡くなったという連絡を受けた時に建玉を全て決済します。
そして、現金化されたお金を相続財産として相続人が分け合うことになります。
しかし、この時に気を付けなければいけないポイントがあります。
それは、建玉を決済するのが『亡くなったという連絡を受けた時』というタイミングになる点です。
証券会社は、取引を行っている人が亡くなったことを自ら知る手段がありません。
なので、ご家族など、相続人(相続財産を受け取る権利がある人)が連絡をしない限り信用取引・先物取引が精算されずそのまま残ってしまいます。
2.相続が起こった後のリスク
信用取引・先物取引の怖い所は、残された家族が証券会社に連絡をしないまま放置されてしまい、亡くなった後に価格が大きく変動してしまうリスクがあることです。
気付いたら価格が大きく下がっており、相続財産が目減りしてしまうということは十分に起こり得ます。
さらに、証拠金が足りなくなった場合は証券会社によって強制的に決済されてしまいます。
そうなってしまった場合、投資した金額のおおよそ2割程度しか手元に残りません。
また、最悪なのはリーマンショックやコロナショックの時のように急激に下がってしまい、証券会社による強制決済が間に合わない場合です。
その場合は、追証(追加証拠金)が必要になり借金が残ってしまいます。
相続が起こった後に証券会社にその旨を報告しないで建玉が残ったままの状態だと、最悪の場合相続財産ではなく借金が残ってしまうリスクがあるのです。
レバレッジの効く信用取引・先物取引の場合は、こういったリスクがあることを理解しておきましょう。
3.信用買いの相続税の評価方法は?
次に、相続が起こった場合にどのように相続税の評価がされるのかを見ていきたいと思います。
信用買いの場合、相続税の評価は『株式の評価額+逆日歩』から、
『買建金額+利息』を引いたものになります。
この時の株式の評価額の計算方法ですが、現物の株を持っているときと同様、株の価格について以下の4つの中から最も有利なものを選ぶことが可能です。
1:相続が起こった日の終値
2:相続が起こった月の毎日の最終価格の平均額
3:相続が起こった月の前月の毎日の最終価格の平均額
4:相続が起こった月の前々月の毎日の最終価格の平均額
例えば、5月30日にA株を5000株、1000円で新規に信用買いを行い、9月15日に信用買いを決済しないまま相続が起こったケースでは次のようになります。(逆日歩や利息は通常はそれほど大きな金額になりませんので、ここでは無視します)
なお、A株の株価はそれぞれ以下のとおりです。
1:相続が起こった日(9月15日)の終値・・・1600円
2:相続が起こった月(9月)の毎日の最終価格の平均額・・・1700円
3:相続が起こった月の前月(8月)の毎日の最終価格の平均額・・・1400円
4:相続が起こった月の前々月(7月)の毎日の最終価格の平均額・・・1200円
株式の評価額は上記1~4の中で最も低いものを使えますので、4.の1200円となります。
買建金額は5月30日の1000円です。
したがって、(1200円×5000株)-(1000円×5000株)=100万円が相続財産となります。
4.信用売りの相続税の評価方法は?
信用売り(空売り)の場合、相続税の評価は『売建金額+利息』から『借株の額+逆日歩』を引いたものになります。
この時、相続税の評価は亡くなった日の価格で計算されます。
信用買いのように、時期を選ぶことはできないので注意が必要です。
例えば、5月30日にB株を2000株、2000円で新規に信用売り(空売り)を行い、9月15日に空売りを決済しないまま相続が起こったケースでは次のようになります。(逆日歩や利息は通常はそれほど大きな金額になりませんので、ここでは無視します)
なお、相続が起こった日(9月15日)のB株の株価は1800円です。
売建金額は5月30日の2000円です。
したがって、(2000円×2000株)-(1800円×2000株)=40万円が相続財産となります。
5.先物取引の相続税の評価方法は?
先物取引(先物買い)の場合、相続税の評価は『先物の評価額』から、『買建金額(先物買いしたときの単価×数量)』を引いたものになります。
また、先物売りの場合の相続税評価は、『売建金額(先物売りをしたときの単価×数量)』から『先物の評価額』を引いたものになります。(なお、先物決済を相続が起こった直後に行った場合の先物の評価額は、実際に決済をしたときの価格とすべきという判決があります。)
例えば、12月限の日経平均先物(ラージ)を9月15日に27000円で10枚買い建てし、それを決済しないまま9月30日に相続が起こったケースを考えます。
9月30日の日経平均先物は27500円であったとすると、評価額は(27500円×1000×10枚)-(27000円×1000×10枚)=500万円となります。
6.相続税はかかるけど、借金が残ってしまうリスク
信用取引・先物取引の場合、レバレッジがかかっているので急激に価格が下がってしまう危険性があります。
その為、亡くなった日に高い評価が付いていたにも関わらず、その後に強制決済をされてしまうと、
『相続税はかかるけど、残る財産はほとんどない。最悪の場合は借金が残る。』
という状態になってしまいます。
こうなってしまっては、残された家族は困ってしまいますよね。
信用取引・先物取引の相続では、こういったリスクがあることを理解しておく必要があります。
7.相続に備えてやっておくべきこと
では、信用取引・先物取引をやっている場合は相続に備えて何をすれば良いのでしょうか?
まず一番大切なのは、『家族に知らせておく』ということです。
事前に信用取引や先物取引をやっていることを伝え、もし亡くなった場合は証券会社にすぐ連絡するように伝えておく。
これが非常に大切になります。
とは言っても、「信用取引や先物取引をやっていることは家族には秘密にしており、あまり言いたくない」という場合もあるでしょう。
その場合は遺言やメモなどの形で、亡くなった際に証券会社の連絡先とログイン情報、そして何をすべきかが家族に伝わるようにしておくべきです。
現物と比べて、レバレッジのかかる信用取引・先物取引はリスクが非常に高くなります。
残された家族に迷惑をかけないようにする為には、必ずこの対策はするようにしましょう。
ただし、証券会社によっては書面での確認が必要な為、相続が起こってすぐに連絡をしたとしても1週間〜2週間ほどかかってしまう可能性があります。
この点も把握をしておくべきですね。
8.生前に決済をしておくことでリスクを減らす
信用取引や先物取引をやっている場合の相続対策としてもう1つ考えられるのは、
『生前に決済をしてしまう』
という方法です。
先に決済をしてしまえば、相続で問題になることはありません。
信用取引・先物取引は証券会社によって年齢制限がありますが、その年齢に達する前でも相続のことを考えて手を引くのも1つの考え方です。
年をとったら信用取引・先物取引はやめ、現物株などの投資方法に切り替えるのも良いと思います。
9.まとめ
以上、信用取引・先物取引を行っている時に相続が起きたらどうなるのかを見てきました。
信用取引・先物取引はレバレッジがかかっている取引であり、相続の時でも大きなリスクを抱えることになります。
特に、追証が必要になってしまった場合は家族に大きな負担を残すことになってしまう可能性があります。
何もしていないと残された家族に迷惑をかけてしまうことになるので、必ず適切な対策をするようにしましょう。
10.相続対策をどうすればいいのか相談したい場合
もし、信用取引や先物取引を現在行っていて、
「相続に備えて自分の場合はどうすればいいのか具体的に教えて欲しい」
「相続が起こった場合にどうなるのか個別で教えて欲しい」
「自分の場合はどれくらいリスクがあるのか?」
ということを相談したい場合は、初回無料の相続対策相談をご活用ください。
取引自体のリスクをどうコントロールするのかや、今後に備えてどのような対策を行えばいいのかをお伝えすることができます。
リスクが高い取引を行っている場合は、相続対策を適切に行う必要性が高くなりますので、もし少しでも不安があれば直接ご相談を頂ければと思います。